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覚書「ナイルパーチの女子会」柚木麻子 [本]

うーん・・これはねえ、ないよ(笑)

作者が、この御本についてインタビューで、「(登場人物の)栄利子も翔子も、正気の人間として描きたかった」ということを話しておられた。
お気持ちはわかる。
確かにふたりとも「正気」なんだというのも、わかる。
ただ、ともに、深い病理を抱えている。

ええと、ですねえ・・
何が「無い」のかといえばですねえ・・

まず、翔子のブログがちっとも魅力的じゃない。
あのブログがランキングで上位にいくなんて、とてもとても思えない。
お気楽な奥さんの、ひょうひょうとした毎日を綴っているブログが、それでもすごく人気が出るとしたら、何か強烈な魅力があるはずなんだよね。
それが無い。
何度も引用されてるけど、ほんとつまんないの。

で。
栄利子。
この人は「正気」だけれど「病気」です。
精神のどこかが、幼児のままで止まっている。
栄利子がどうしてそんなに「同性の友達」に固執するのか、最後まで理解できませんでした。
確かに、彼女に友達はできないだろうなあ・・と思うし、だからこそ渇望するのはわからなくもないんですが・・彼女には、「自分は優秀な人間なんだ!!」という錯覚があり、
「足りないとしたら、それは女友達だけ・・」という思考回路になってるのもわかるんですが。

そしてですねえ・・
栄利子が勤めているのは、日本最大手の「商社」とのこと。
ええと・・日本最大手の商社にも、霞が関にも、教育者にも、どこにでも「人間的にどうかと思う人」はいます。それは、職種や学歴や成育歴とは関係が無い。

でも、この本に描かれている「日本最大手の商社」の社員たちは、みんなバカみたいなんですよ。頭悪すぎ。
あきれるほどに無能。

でもって、その「日本最大手の商社」に派遣社員としてもぐりこんだ女、真織。
んー・・・
最大手の商社の事務作業は、かなりなスキルを求められると思いますよ。
真織にそれだけの能力があるようには、とても思えませんでした。
そして、そんな真織に騙されて結婚させられた男。
こんなバカいないって。
いや、可能性はゼロじゃないけれど。
もしも、何かの間違いで、こういう女に引っかかって結婚する羽目になったとして、
給湯室で芋けんぴぶっさされたり蹴っ飛ばされたりして、それで怯えてるだけの男って、あんたバカなの?
ほんとにそんな状況になったら、日本最大手の商社に勤める頭脳と人脈フル活用して、
そんな女さっさと切ればいいだけの話。なにしてんだよほんとに・・

登場人物がみんなバカみたいなんですよ、ほんとに。

栄利子が真織に、「あたしの彼と寝た」と恐喝されて、「営業部の男全員と寝ろ」と言われて従うとか。
あのさ、栄利子が寝たのって、別に入籍前だよね?だったらなんの問題もないじゃん。
うっせーこのやろー!!! でいいんですよ。

本の中では、わざわざ「東電OL」を出してきたりしてたけど、栄利子は全く違う。
東電OLの、死の淵ぎりぎりに立ち続けた凄味なんて、栄利子にはかけらも無い。

そしてですね、真織は性格に多々問題ありだけれど、自分と同じような境遇の女友達には感謝しており、彼女たちの幸せを願っている。
結婚式には彼女たちを呼んで、いい出会いを作ってあげたいと思っている、という箇所。
だからさ、選ばないんだよ。
真織はたまたまバカな男をだまくらかすことに成功した。
でも、そこに勤める男たちが、もし自分と学歴や環境の違う女たちを伴侶に選ぶとしたら、それは一重に「その女の人に魅力があるから」なんだよ。
心根の優しさや、一所懸命さや、忍耐強さや、学歴とは違う賢さや、そういうところに惹かれて行くんだよ。
そういうことが分かっていない時点で、真織はアウト。
そもそも派遣先であんな大立ち周りを演じたら、ふつう派遣先から派遣元にクレームがいって、切られる。

会社の描写も、「日本最大手の商社」にはとても見えませんでした。
よくある中小企業の中のお話みたい。

作者が、日本の会社組織について(大小かかわらず)、あまり理解しておられないように感じました。
例えば、信用金庫の中で、高卒のベテラン女性社員が孤立していく過程は、桐野夏生氏の「OUT」にとてもよく描かれています。ああいう現実味が、まるでありませんでした。



最後に。多分伝わらないだろうけど、栄利子に。

あのねえ、ともだちなんていらないんだよ。
みんな一人で生きてるんだよ。
ともだちなんて、「作ろう」と思って出来るもんじゃないんだ。
気が付いたら横にいるんだよ。
あんたはただ、一所懸命生きてればそれでいいんだよ。

職場なんてね、砂漠なんだよ、砂漠。
みんな裸足で、どこが終わりかもわからない焼けた砂の上を、たった一人で歩いて行くんだよ。
あんたが必死で歩いている時、誰かがあんたを助けてくれるかもしれない。
自分も足の裏を焼きながら、あんたを助けようと手を伸ばしてくれるかもしれない。
それが友達なんだよ。
それまでは、一人でいることに耐えながら、歩くしかないんだ。
それからねえ、仕事も職場も戦いなんだよ、戦い。
一発殴られたら、三発殴り返すんだよ。
職場には、お父さんもお母さんもいないよ。
味方なんて誰もいない。
全員を敵に回してもそこで生きるんだ。
あんたに噛みついてくる奴がいたら、あんたもそいつに噛みつき返すんだよ。
食らいついたら最後、そいつの肉を食いちぎるまで歯を食いしばって耐えるんだよ。
あんたが居る「日本最大手の商社」は、本来そういうところじゃないのかね?

あんたは、自分で思ってるような優秀な人間でも、美しい人間でも無いんだ。
人の気持ちがわからない、他者との距離の取り方がわからない、自分本位な困った人間なんだよ。 それだけ。




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カオリ

「そろそろ直木賞、狙いに行きましょうよ!シリアスな感じで!」という編集者の言葉が聞こえてきそうなくらい、無理しちゃった感の強い作品でした。
人は家庭から学校、ご近所、会社までいろんな「組織」に複合的に属して生きていると思うのですが、それが感じられない作品だなぁと思いました。Shoさんのレビューを読んで、柚木さんって、ひとりの「個人」がドタバタするお話しを書くと面白いんだけど、複合的な視点を入れるのが苦手なんだろうなぁと改めて感じました。だから組織の中で生きることに関してこれほどまでにリアリティのない物語になってしまったのではないかと・・・。
by カオリ (2015-09-18 19:22) 

Sho

to カオリさん

ネットでいろいろ拝見すると、この方の御本はけっこう評判良いのですよね。
私はこれが最初になったわけですが、他の作品であれば、もっと「いいなあ」と思ったのかなあ、と思いました。

>いろんな「組織」に複合的に属して生きている

ああ、そうです。
カオリさんのコメントで気付きました。
登場する人たちの「立体像」「360度の姿」が見えないんですよね。

同じ「女のひと」「ブログ」でも、「嘆きの美女」はおもしろそうだと思いました。

nice!とコメントをいただき、ありがとうございます。
とてもうれしかったです。


by Sho (2015-09-19 08:39) 

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