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覚書「Dr. 倫太郎」 [ドラマ]

ドラマなんだからさ・・と、言われればそれまでの話である。
所詮ドラマなんだから、現実とは違っていたって仕方ないじゃない。
所詮ドラマなんだから、そんなことあるわけねえ!!と憤ったってしょうがないじゃない。
それはわかるけれども、覚え書きとして書いておく。


所詮ドラマなんだけれども、書く人間、作る人間には、「責任」というものがある。
誹謗中傷はともかく、様々な意見や批判には、謙虚に耳を傾け、己を省みるべきである。


不自然なところも嘘くさいところもいろいろあるが、
許せないことがある。
倫太郎である。

理想の精神科医などめったにいないし、だからこそ、こういうドラマを人は求めているのかもしれない。でも、見た人はその希望を打ち砕かれたね。

倫太郎はどうして夢乃を特別扱いするの?
そりゃあ恋しているからですよね?

脚本の中園ミホ氏にとっては、最も関心があり、尊いものは恋愛のようだ。
「花子とアン」を見てもそう思った。
燃え上がる恋、ちりちりと音を立てて胸を焦がしていく嫉妬の辛さ。
スーパー(と評される)精神科医と、辛い生い立ち境遇から精神を病んだ美しい女の恋を書きたかったのかなあ・・と推察する。


で。

脚本家の欲望を満たすために、精神疾患の患者が存在しているわけじゃないからさ。


女の患者に自宅訪問を許可したり、ラインしちゃう精神科医はいないから。

若すぎず、年寄りすぎもせず、ハンサムで暖かい精神科医には、診察希望の患者が押し寄せるはずだ。
そしてその中の多くの人が、愛情に飢え、庇護を渇望し、自責の念につぶされそうになりながら生きている。
倫太郎を標的に、ストーカーになる患者もいる。
その患者は、主治医が変った。
彼女は、倫太郎の夢乃の対する行動を知ったら、どんなに傷つくだろうか。
自分には許されなかった自宅で会うことも、「貴方は僕にとって大切な人なんです!!!!!」という言葉も、夢乃という女は許されている・・

患者の両腕をがっしりつかみ、「貴方は僕にとって大切な人です!! でも、男女の仲になるわけにはいかないんです!!!!」という精神科医はいません。

なんで謹慎中なのに、夢乃の診察には出てくるのですか?

泣きながら診察室を後にする夢乃。
呆然と残された倫太郎は、何かに気づいたように立ち上がり、彼女を追いかける。
そしてエスカレーターで降りようとしていた夢乃を力いっぱい抱きしめる


あのね。
診察室の外、つまり待合コーナーと院内の廊下だからね、倫太郎の患者もたくさんいるでしょう。
「倫太郎先生は、ちょっとお休みしていて・・でも、代わりの先生が拝見しますからね」と言われて、不満と不安でいっぱいになった人たちも、その場所には居るはずだ。

そこをですね、当の倫太郎が女追いかけて走っていって、挙句抱擁しちゃうわけですよ。


私が倫太郎の患者で、その場面を目撃したら。
倫太郎の目の前で、夢乃を刺します。
もしくは、自分を刺します。


思うんですけどね、このドラマもそうだし、売れてる小説でもあったりするんだけど、
簡単に人死なしちゃったりね、精神疾患にしちゃったりね、だめだよ。
その方が話が盛り上がるんでしょ?

でもさ、駄目だよ。
どうしてもそういうこと書きたいんなら、腹括らなきゃ。
いい加減な気持ちでそういうことを入れちゃ駄目なんだよ。


あんなこと実際に病院でしたら、死人が出る。
だって、みんな自分の命かけて愛情を欲してるんだもの。
得られなくて得られなくて、ようやく自分をわかってくれる先生に出会えたんだもの。
その人が、自分以外の女の人を追いかけて、抱きしめてるのを見ちゃうんだもの。
「夢乃」になれなかった人たちは、絶望の中でようやく射した光に又絶望する。


実際の、精神科医と患者の対話、カウンセラーと患者の対話というのは、
命綱無しの綱渡りみたいなものだ。
ほんの不用意な一言が、相手の命を奪ったりする。
文字通りの真剣勝負なんですよ。



誰かのドラマや小説のために、人間の苦しみが存在しているんじゃないんだ。
そんなドラマや小説の書き手の満足手段のために、懸命に生きてる人たちがいるんじゃないんだ。


みんな必死で生きてるんだ。


もうそんなことも、この人たちにはわからないのだろうか。



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カオリ

ドラマのお膳立てのためだけに病気や人の生き死にを扱うのは、表現者としていかがなものか、と激しく同意です。
倫太郎は数回だけ見て見るのやめてしまいましたが、今やそんな展開になっているんですね。こんな精神科医はいない、っていう記事をネットでも見ましたが、ほんとにそう。こんなうかつな精神科医がいたら(しかも大学病院の精神科に通うってことは深刻な状態の人が多いわけですし)恐ろしいです。。。
by カオリ (2015-06-17 16:53) 

Sho

to カオリさん

nice!とコメントを、ありがとうございます。

Dr.倫太郎。先日終わりましたね。
実はこの拙文を書くにあたり、心に懸かっていたことがありました。

amazonで、何を読もうかなあ・・と、いろんな本の紹介やレビューを見ていました。
そのときに、かなり多くのレビューがついた本があったんですね。
私はまだその筆者のご本は、一冊も読んだことがありませんでした。
最近話題で、ヒットを連発し、根強いファンもいる方でした。

その方の書かれたとある本の説明で―
記憶違いがあれば申し訳ないのですが、家族の中で、健康だったお兄さんは事故で障害が残り、自死を遂げる。
美しい容貌のお姉さんは、顔に傷が生じる。
そして、誰かがアルコール依存症になるんですよ。

それでもけなげに生きていく主人公のようなのですが。

たくさんあるレビューは、否定的なものが多かったです。
その中のお一人のレビューに、
「ここに出てくる病気や障害が、一つでも、自分や自分の家族に当てはまる人にとっては、この本は白々しく感じると思う」とあったのです。

それを読んで、「ああ、そうだろうな・・」と思いました。

人がどんなことをテーマに小説を書こうが、それは自由であると思います。でもねえ、死とかね、一生消えない深い深い傷とかね、
そういうものを書くのは、やはりかなりの思慮と、覚悟が必要だと思ったんですね。

そしてなんだか、自死や障害や顔の傷やアルコール依存症や、そういうものが無いとあなたは本がかけないわけ?
そういうものがあれば、そりゃあインパクトは大きいよね?
でもさ、実際にそういうことが身に起きた人たちは必死で生きてるわけでさ、あんたの小説盛り上げるために使うのやめてくれない?
と、思ったんです。

Dr.倫太郎も、同じことを思いました。

誤解かもしれないけれど、少なくとも私は、そのレビューの本の作者や、倫太郎の脚本家の心の中が見えたように感じました。
それが非常に腹立たしかったのです。

by Sho (2015-06-20 10:48) 

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