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中島みゆき [歌手]

彼女のことをとりあげるのは難しい。

非常に誤解を生じ易い表現になるが、
私は彼女の書く詩を「人生に絶望したことのある人」の詩、だと思ってきた。

人生に希望を抱いていない、のではない。
幸せになる努力を放棄している、のではない。
幸せになる努力を否定している、のではない。
人生に価値を見出していない、のではない。
人間なんて所詮こんなものと思っている、のではない。
日々を楽しんでいない、のではない。

全て正反対である。

ただ、生きている過程で、決定的な事実として「人生に絶望」したことがある、
と思ったのだ。

誤解を招く表現を続ける。

私も、ある地点で「人生に絶望」した。

私は自分を不幸だとは思っていない。
寂しいと思うことなど、ほとんどない。
げらげら笑うこともよくある。
冗談は好きだ。
ああ、今日はよく頑張った・・と布団の中でコリコリ棒で背中を揉み解し
思うこともある。

不幸であろうが幸福であろうが、人生は十分に生きるに値するものだと思っている。
失敗が不幸であり、成功が幸福であるとは思っていない。

中島みゆきの書く詩は、シンガーソングライターというレベルを超えていると思う。
この人を、一人の女流詩人として扱ってもなんら不思議はないと考える。

シンガーソングライターと呼ばれる人の中で、たまに「凄い」と思う詩を書く人はいるが
これだけ長い年月、一定のレベルを保つ作品を世に出し続けた人は居ないように思う。

まだ私が二十歳くらいだった頃、とても不思議だった。
「私が身につけた人生への絶望感を、この人は何処で身に着けたんだろう ? 」

傲慢なようだが、ホントに不思議だったのだ。

その頃私は学生で、通学路に大きな本屋があった。
そこで、よく雑誌を立ち読みして帰った。

ある日、初めて目にする雑誌があった。
音楽雑誌のカテゴリーに入れてあった。
私は手にとり、ぱらぱらとページをめくった。

中島みゆきの特集が組まれていた。

それまでにも、彼女のことを書かれた単行本がいくつか出ていた。
しかし雑誌の特集記事を書いた人の名は、いままでに本を出していた人達ではなかった。
他誌のインタビューでも見たことはない。
でもとにかく、その長いレポートを読み始めた。

そして―
当時あたまから離れなかった疑問が解けた。
私はその時、「彼女と繋がった」と思った。

その雑誌記者は彼女の生い立ちから、詳しく調べていっていた。
彼女の地元に行き、いろいろな人達から話を聞いていた。

その人は、記者としてはプロではなかったかもしれない。

「―僕は悩んだ。全てを記事にしてしまってよいのか ?
 そんな権利が自分にあるのか ? 」
「―インタビューを終えて帰り際、その女性が言った。
 “みゆきさんが悲しむようなことは、書かないでくだいね・・”」

おそらく彼は、どうしても書きたかったことは記事にしていないのだと思う。
なので、読者はそれが何なのか知らない。
でも、その特集だけで、私はもう十分だった。
別に特別な記事ではない。
ただ丁寧に、一人の生きてきた軌跡を辿ったものだったが。

今はもう、そんなことはないのだろうか ?

昔はこの人の「歌詞の暗さ」とラジオのパーソナリティ時の「ぶっ飛び加減」の差異が
よく取り上げられた。
「どっちがホントの中島みゆきなんだよ?」と。

どちらも本当の中島みゆきだ。

人は自殺を考えている最中でも馬鹿笑いが出来るし、
悲しみのさなかでも、対話が出来る。
ある地点で何かに絶望したとしても、「普通の暮らし」を営んでいける。

私は映画を観て涙を流すことはほとんどない。
ドラマも、このごろは然り。
本は、たまに涙するものに出会うが、最近は読書自体をしていない。

こうして考えると歌を聴いて涙がわいてくることが一番多いように思う。
ただ、歌の場合「何年か前に聞いた歌」を何かの拍子に聞くことが多いので、
その当時のあれこれを追体験したり、その地点から現在地点までの道のりを思って
涙が出たりするわけで、ちょっと特別かもしれない。

でもこの人の歌で、いつ聞いても涙が出るところ、ふと思い出すとよく涙がでそうになるものはある。

ドラマ「家なき子」の主題歌にもなった歌で、「空と君のあいだに」

―空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る
 君が笑ってくれるなら、僕は悪にでもなる

この「悪」と云うところで、中島みゆきは腹の底から絞りだすような、あるいは吐き捨てるような
演歌の拳の極みのような歌い方をする。
その声を聞くと私はいつも涙が出る。

世界中が敵になっても、たった一人自分を見続け愛してくれている人がいると「確信」できるのだ。

「プロジェクトX」 の主題歌「地上の星」も異色のロングセラーとなり、
もう、中島みゆき=暗い という図式は崩れたように見える。

この曲も私を泣かせる。

―みんなどこへいった。見送られることもなく。

―地上にある星を誰も覚えていない、
 人は空ばかり見てる。

―つばめよ高い空から教えてよ、地上の星を
 つばめよ地上の星は、今何処にあるのだろう

この歌を聴くたびに、私は父を思い出す。
おそらく、どうしても行きたくなかったであろう職場に、
それでも足を引きずりながら通った父を思い出す。

「ファイト」
―戦う君の歌を、戦わない奴らがわらうだろう   (ファイト!)
 冷たい水の中を、震えながら上ってゆけ

「誕生」
―めぐりくる季節を数えながら
 めぐりあう命を数えながら
 畏れながら憎みながら、いつか愛を知ってゆく
 泣きながら生まれるこどものように
 もいちど生きるため泣いてきたのね

―Remember 生まれたとき誰でも言われた筈
 耳をすまして思い出して、最初に聞いた Welcome

Remember けれどもしも思い出せないなら
 わたしいつでもあなたに言う
 うまれてくれて Welcome



この詩は、一度絶望しなければ書けない詩だ、と私は思う。

彼女との繋がりも、
彼女が人生をどう捉えているかも、
すべて私の独りよがりな考えであり、思いである。

ただもし一つ確実に言えることがあるとするならば、
彼女はある時期の私を救い、支え続けた―
ということである。





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コメント 14

たけし

僕も中島みゆきさんは大好きです。
10歳も歳上の女性ですが、コンサートにも行きました。
オールナイトニッポンも毎週聞いていました。
悲しさと楽しさの両面を感じさせる不思議な魅力に引かれたんです。
色々な形で彼女に救われた人はかなり多いと思います。

でもどうして結婚しないのか、噂話も立たないのが不思議です。
by たけし (2006-09-24 15:44) 

Sho

(^-^)たけしさん、ありがとうございます。
私は「グッバイガール」以降のアルバムは、実は買ってないしほとんど聴いていないのです。
コンサートも行ったことないのです。(コンサート自体にほとんど)
確かにたけしさんのあげてる彼女の魅力はありますね。
多くの人が救われたというのも事実だと思います。

噂は立ちましたよ。私その日に「フライデー」だか「フォーカス」だかKIOSKで
買いましたもの。
もうずっと彼女のアレンジャーしている人です。
確かみゆきさんは、その週のオールナイトで馬鹿笑いしながら否定してたと
思うんだけどな・・記憶違いかな。
オールナイトの最終回のラスト。秀逸でしたね。

「― しあわせと云う字は、辛いという字の上の点が十になると出来ます」
そして「10,9,8,7.....」とカウントダウンしていって
「こんばんは。中島みゆきです」
言い終わると同時に流れたのが「白鳥の歌が聞こえる」この歌も好きです。
by Sho (2006-09-24 15:52) 

たけし

Shoさん すごく詳しいですね。
そうでしたか。 忘れていました。

中島みゆきさんの神秘的な魅力に俗世間の噂は似合わないですから、
みゆきさんには悪いですが、永遠に独身でいて欲しいと願っています。

ところでShoさんにも神秘的な魅力を感じるのは僕だけでしょうか・・・?
by たけし (2006-09-24 16:18) 

Sho

(^-^)そうです。
by Sho (2006-09-24 16:22) 

melody

私はso-netさんの会員ではないので“nice!”を押すコトが出来ないのですが
私からも“nice!”を…

そういえば高校生の頃、近所の大学生にみゆきさんのコンサートへ
連れて行ってもらった事がありました。
アルバムは数枚聴いてはいたのですが、コンサートは独特の世界が
目の前にあって、言葉に出来ない何かに圧倒されてしまったのを
思い出します。
生のみゆきさんのオーラは特別でしたね。
『ファイト』なんて懐かしい!
久しぶりに聴きたくなりました…
あれから私もいろいろ経験して、今聴くと歌詞が胸に響き過ぎるかもしれませんね。

私もたけしさん同様、shoさんにとても魅力を感じている一人です。
たまたまお邪魔して、今やすっかりファンですもの(*^-^*)
by melody (2006-09-24 21:32) 

Sho

(^-^)noel さん、nice ! ありがとうございます。
いつも丁寧に読んでくださって、心にかけてくださって、ありがとうございます。
by Sho (2006-09-24 22:53) 

Sho

(^-^)melody さん、nice ! とコメント、ありがとうございます。
多分リアルみゆき嬢は、すごいオーラでしょうね。

数年前に渋谷のBunkamura に画を観にいったとき、たまたま「夜会」の日だったんですよ。
チケットとれなかった人達が「チケット買います」ってカード持ってました。

>今聴くと心に響きすぎるかも・・
そうですね。(苦笑)そうかもしれません。
難しいけど、私のベストアルバムは「グッバイガール」です。

過分なお言葉ありがとうございます。
by Sho (2006-09-24 22:58) 

魚河岸おじさん

「誕生」と「歌姫」
コノ二曲はいつ聴いても
ボクの心に何かを残してゆく曲です
by 魚河岸おじさん (2006-09-25 17:25) 

Sho

(^-^)魚河岸おじさん、nice ! とコメント、ありがとうございます。
「歌姫」もいいですね。ときどきメロディーと歌詞が浮かんできて、小さく口ずさんだりします。―夢も、悲しみも、欲望も、歌い流してくれ  

>ボクの心に何かを残してゆく
ああ、いい表現だなあ・・と思いました。

いつか私も誰かの心に、ささやかでも何かを残してゆきたいと思いました。
by Sho (2006-09-25 22:13) 

nikoniko-nikorin

みゆきさんも,shoさんも素敵です
新聞に,新しいアルバム発売されると出ていたので,もう何年も音楽のアルバムなんて買うこと無かったのですが,これは買おうと思っています
(ブログ初心者のため,コメントへたです。すみません)
by nikoniko-nikorin (2006-11-26 10:00) 

Sho

(^-^)itumi さん、ようこそお越しくださいました。
nice ! と、真っ直ぐな、心のこもったコメントをありがとうございます。
ちっともへたじゃないですよ。偉そうにすみません。

新しいアルバム出るのですか?貴重な情報、ありがとうございます。
お褒めの言葉もありがとうございます。(照れ照れ・・)

先程、itumi さんのブログにお邪魔しました。
「手紙」は私も気になっています。でも、原作を先に読みたいかなあ・・

又、ぜひ遊びにきてくださいね。
by Sho (2006-11-26 15:00) 

nikoniko-nikorin

そーなんです
いつも原作があるときは悩んでしまうのです
どちらを先にしようかと・・・
原作を読んで感動してしまうと、自分の中で生まれた作中の人物像と、映画の中の俳優さんのイメージが・・・なんかちがう・・・と、思ったり
「手紙」は先に映画を見てしまいましたが、原作も絶対読もうと思います
by nikoniko-nikorin (2006-11-27 17:21) 

Sho

(^-^)itumi さん、お返事遅くなり、ごめんなさい。
フフフ・・・ アイコン変わりましたね。何とも可愛らしいけど、実はその生き物
斧か何か持ってます?なんだろう?

原作物はそうですよねえ。私も小説読みながら、俳優さんとかが浮かんできて
もうずっと最後まで、頭の中でその人が演じてる―みたいになることあります。
東野東吾さんは、「白夜行」を読んで、その続編を読みたかったんですよ。
by Sho (2006-11-28 23:13) 

若松若水

素敵な記事ですね。
私も中島みゆきのファンです。
最近、ブログを始めて、
「教育実習生の中島みゆき」という記事を書きました。
よかったら、覗いてみてください。
by 若松若水 (2017-08-17 22:55) 

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