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母の日に [わたしのうた]


カーネーション渡す人亡き君たちの心をあたし思っているよ



カーネーション母居るところに行く道が無くて探すも見つけられない



カーネーション渡せた年は幾つやら母よ許せよその少なさを



お母さんいつ来てくれてもいいからね幽霊でいいよ怖くないから



母の日の街の賑わい思い出すあの日泣いてた子もいたろうに



お母さんどんな姿でもよかったよただただ生きていてほしかった



もしそこが春風なびく日向ならのんびり過ごして幸せでいて




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ご連絡 [ご挨拶]

御連絡

いつもお越しくださる皆様、今日ちょっと覗いてみたという皆様、
 この拙いブログにおこしいただき、ありがとうございます。

もう2年も前になりますが、「マタニティマーク」についての考えを書いた
文章があります。
この文章には、本当に多くの方から、御意見、御関心をいただき
とてもありがたいことと思っております。
お寄せいただいたコメントには、私なりに誠心誠意おこたえして参ったつもりです。
真摯な御意見には、必ずお返事をいたしました。
時には全身からエネルギーを搾り出すようにして、お返事を書きました。


ここでお知らせなのですが、今後、該当の文章にコメントをいただきましても
お返事は原則控えることといたします。
理由は、私の心身の安定を保つためです。

これから先、私にどれだけの時間が残されているのかわかりませんが、
エネルギーの使い方、使いどころを考えようと思いました。
お汲み取りいただけましたら幸いでございます。

どうぞこれからも、気が向かれたときに、いつでもお訪ねください。



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「時代」中島みゆき [歌手]


この歌のことを書くのに、こんなに何年もかかってしまった。

発売が1975年。もうじき40年が経とうとしている。

平易な言葉。
平易なメロディ。
なんら奇をてらったところがない歌を、
これまた静かに、自然に、そよぐ風に身を任せるように中島みゆきが歌う。


          今はこんなに悲しくて
          涙も枯れはてて もう二度と笑顔には
          なれそうもないけど

出だしにそう嘆いたあと、ポロポロとギターのアルペジオに続く。

          そんな時代もあったねと
          いつか話せる日が来るわ
          あんな時代もあったねと
          きっと笑って話せるわ


そうなんだろうか・・
今、嘆きの最中に居る人には「本当だろうか」と思えるだろう。
何年経ったって、笑ってなんか話せない。

でももしかしたら。
微笑んで、「よくがんばったね」とは言えるかもしれない。


          だから今日はくよくよしないで
          今日の風に吹かれましょう


          まわるまわるよ時代はまわる
          喜び悲しみくり返し
          今日は別れた恋人たちも
          生まれかわってめぐりあうよ


今このときも、時は流れを止めずに流れ続けている。
辛い時期があって幸せな時期があって
その二本の紐を編んでいくように、日々は続いていく。
ふと紐を見れば、哀しみと思っていた時期が懐かしい色に染まり
幸せと思っていたはずの時期が、悲しみの位置に置かれていたりする。

中島みゆきは喜びと悲しみで編まれた時の流れに、
細い銀の糸を織り交ぜる。
「希望」というその細い糸は、決して切れてしまうことなく
時の流れに組み込まれていく。


恋人と別れ、二度と会えぬと思えば辛すぎる。
しかし中島みゆきは「そんなことはない、大丈夫」だと歌う。

今日は別れたあなたたちも、生まれ変わってちゃんと又巡り合うのだと
さり気なく歌うのである。



          旅を続ける人々は
          いつか故郷に出会う日を
          たとえ今夜は倒れても
          きっと信じてドアを出る
          たとえ今日は果てしもなく
          冷たい雨が降っていても


そうだ、人生は旅に似ている。
遠い昔、誰もがそうしたように、自分の足で一歩一歩歩く旅だ。

筋肉は固まり、豆はつぶれ、剥けた皮膚に布が触れれば飛び上がるほど痛い。
ああ・・こんなはずではなかっと、
思う傍から雨が降ってくる。

もう一歩も進めないと思うことが、人生の旅で幾度あるだろう。
そう思っても夜は更け、やがて日が昇り、旅人は又一歩
前に進むのである。

          たとえ今日は果てしも無く
          冷たい雨が降っていても



果てしないものなど、何も無かったのだ。

雨もいつかは止む。
よろこびも永遠には続かない。

          めぐるめぐるよ時代はめぐる

中島みゆきの歌声が、輪唱のように響く。

          別れと出会いをくり返し

ああ・・この絶望からも、いつか抜け出せる日がくるのか・・

          今日は倒れた旅人たちも
          生まれ変わって歩き出すよ


いつかいつかここから、違う場所に歩いていけるのか・・


忘れる、のではないんだ。
愛しい愛しい人を、忘れるはずがないじゃないか。
ただ哀しみが、少しずつ、少しずつ、薄れていくだけだ。


 
この歌は、中島みゆきの原点だと思う。
若干二十歳で「諸行無常」を自分の言葉と音で歌った。
その曲はあまりにもさり気なかったから、
そして彼女はあまりにも自然に歌ったから、
この曲の深さを見落としてしまう人たちもいた。

けれど、二十歳の中島みゆきが「ヤマハポピュラーソングコンテスト」の会場で
この曲を歌ってから約40年。
彼女が祈りのように込めた希望の糸の細い光を絶やすことなく、
この曲は幾万の人の心を、慈しみ抱いてきたのである。



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疲れきる [雑感]


私と同じ仕事に新しい人が来て、数ヶ月経った。

今まで何人もの人が来て、そして誰も続かなかった仕事だ。

ボスはそれを私のせいだと思っている。

自分ひとりでこの仕事をしたい私が、きつい言い方をしたりして
新しい人を居辛くさせ、結果みんな辞めていったのだと思っている。


今回の人(仮に○○さんとしよう)とは、とても良好な関係が築けていた。

私は○○さんを見ると、かつてお隣に住んでいた△△さんを思い出した。
元気が良くて、カラッとしていて、働き者で、私や母や弟をよく助けてくれた。
情に厚く、母の話を聞いては泣き、自分のことを話しては泣いていた。

○○さんは、私がボスになじられたり、みんなの前で能無し扱いされたり、
雪崩のように仕事を与えられたり、ほとんど無視されるたびに、
「心が痛いです」と言って、自分のことのように目に涙をいっぱい溜めていた。


○○さんがめでたく初受注となった。
そして日をおかず、第二の受注も獲得した。

彼女から報告を受けたボスはご機嫌で、
「しかしあなたすごいねえ! ! こんなに連続で! !」

彼女は、お礼を言いながら、
「Shoさんのおかげです。
全部Shoさんに教えていただいたので」と、私を立ててくれた。

ボスはそれには何もこたえなかった。

「Shoさん、本当にありがとうございました。
 メールの文章も、添え状も、全部Shoさんに書いてもらって・・
 送る資料も、"これを入れるといいよ"とか全部してもらって・・
ほんとにShoさんのおかげです」と、
彼女はお礼を言ってくれる。

ううん。そんなことないです。
○○さんの力です。
今まで居た方は、ここまではっきり「Shoさんのおかげです」とは
言ってくれなかったんです。なので、
そう言っていただいて、それだけで本当にうれしいです。

○○さんへの賞賛が終わったら、こんどはボスは、私への叱責が矢のように飛んでくる。
あれはどーした?
これはどーなった?
ええっ? 僕はそんな事一言も言ってないよ!
そんないいかげんな事言っちゃ駄目だよ!
あなたはいつもそうやっていいかげんなんだ!
あなたがしなかったから、そこで仕事が止まっちゃったんじゃないか!!
すぐに先方に電話しなさいよ!!

なんで今日はこんなにアプローチの件数が少ないんだ?
××の準備?
そんなのすぐ終わるじゃないか。30分で終わるよ!

あ・・ いや、30分は・・

「じゃあ、あなたがこんど××の準備するとき、傍で見てるよ。」

私はもう何も言う気もなくなって、
胸の底に重い石がいくつも溜まっていくようで、
ものすごく疲れて沈黙した。


席に戻り、「ありがとうございました。本当にお疲れ様でした」と、
○○さんに言葉をかける。
○○さんは、「ううん! だって私何にもしてないですもん! メールだってお手紙だって、なんて書いていいか全然わからなくて、Shoさんに書いてもらったんですもの!」
「アプローチの仕方もわからなくて、ほら、Shoさんが言ったこと、
そのまま書いてそのとおりに話してるんです」

「Shoさん、私にいろいろ教えてくれて時間とっちゃってるんだし、
私からボスにいいましょうか?」

ううん。私がノロいだけです。
そのお気持ちだけで、十分です。
本当に、ありがとうございます。

○○さんは目に涙を溜めている。


教える立場の私は、もうこんなに古株になった私は、
スタッフの誰よりも収入が少ない。
アルバイトで、ボーナスが無いからだ。

アルバイトとして(別に仕事やその他は何も変わらないのだが)約一年仕事をした。
アルバイトになったとき、「まあ一年もアルバイトとして働けば会社に義理は立つだろう」と思った。


私は、いったい何をしてきたのだろう・・と、このごろよく思う。

このプロジェクトの礎を築いたと私は思っている。
しかし、ボスはそれをあっさり否定した。
「別にあなたが頑張ったからじゃなくて、この会社としての実績で
成功したんだ」と、言うようになった。
ボスが何と言ってもいい。
ボスと二人三脚で作り上げたことは、間違いがない。
実際してきた私が言うのだ。こちらが正解だ。


○○さんは、事あるごとに私を気遣い、労ってくれる。

「Shoさんのときは、こんなマニュアルなんて無かったんですものね・・
Shoさん全部自分で考えてなさったんですものね。すごいですよ」
「ねえ、Shoさん、もっと自信もってください」
「私はShoさんの真似してるだけなんですから」


でも私は、なんだか自分が力の無い人間みたいにすぐ思えてしまう。

○○さんの方がずっと上手にやっていくんじゃないかと、
自分はもう要らないんじゃないかと簡単に思う。


私はいったいこの十年、何をしてきたのだろうと、又思う。

こどもの頃から「自分のこと」を考えたことが無かった。
否、「自分のしたいことを優先する」「自分の欲求を満たす」そういうことを考えたことが無かった。
考えるのはいつも家族のことだった。

母が、祖母が辛い思いをしないように。苦しくないように。
父が、恥ずかしい思いをしないように。

そんなことばかり考えていた。

この十年、私は会社のことばかり考えていたと思う。

会社を大きくしたい。もっともっと伸ばしたい。
この会社をもっと有名にしたい。

そして、クライアントになったくださった方々には、決して迷惑がかからぬようにしたい。


「自分」など、こどものころから頭の中になかった。

そうやって働いてきたが、結局この様だ。


何か勉強したいとか、ここに居る間にスキルを身につけてとか、
なんだかドッと疲れてやる気も萎えてしまった。

しんどいねん・・
しんどいねんや・・

○○さんの受注を褒めるなら、どうして私にも一言声をかけてくれないのだ。
仕事量が全く違うのに、どうして同じ件数アプローチするノルマを課すのだ。

オフィスの奥では入って一年ちょっとのヒヨッコが、我が物顔で偉そうなことを言っている。

ああ・・もう疲れた。
昨日は9時に布団に入ったが、夜中と明け方、おねしょをして2回目が覚めた。

疲れたなあ・・
ただただ、眠っていたいなあ・・



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マグダラのマリア [雑感]


私の髪にはたくさんのフケが浮いている
それでもせめて、
せめて、
こころだけはきれいでいたいと、
泣きそうになりながら思う

この前お風呂に入ったのがいつだったか
思い出せない私の体は、
油が浮き、臭い匂いを放っている。
それでもせめて、
せめて、
誰かが言われて悲しくなる事は我慢しようと
たとえ大嫌いな人にでも、
その人が言われて恥ずかしくなる事はなんとか我慢しようと
ぎりぎりにそう思う。


そう思っても私は、
今日も人のことを罵り、馬鹿にして、汚い言葉を吐いた。


マグダラのマリアは、娼婦だったのですか?

娼婦であろうとなかろうと、
誰しもが罪深き一人の人間であることは変わりない。


たとえば、
中島みゆきの「白鳥の歌が聞こえる」、
キム・ギドクの「悪い男」、
そこに出てくる女たちは、マグダラのマリアと重なる。

夢は叶わぬまま、遠い昔に別れた家族と会うことの無いまま
今死に行く男を包み抱き、
「うん。だいじょうぶ。
あんたの思いは、あたしがしっかりと聞いたよ」と
目を見て微笑む女が浮かぶ。

蔑まれて悔しかったね、
皆の前で恥をかかされて体が震えたね、
あんたの失敗を指差して、大声で言いふらしながら嗤った奴がいたね

でもそんなことはどうでもいいこと
あんたは一所懸命生きたよね
あたしはちゃんと知っているよ

何も言わなくてもいいよ
こうしてあんたを抱いているとわかる
悲しかったね
辛かったね
よく耐えてきたね

あんたが気にかけ続けた人たちも
やがてあんたのもとに行く日がやってくる
その日までのんびりと
日向ぼこでもしながら待っておいでよ



赤ん坊を寝かしつけるように
死に行く男を抱く女が浮かぶ


私はこんなに醜い姿になってしまったけれど
私はこんなに汚い恰好をしているけれど
けれどせめて、
せめてこころだけは美しくありたいと
できないけれど
泣きながら私はそう思う



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池田聡「missing」 [歌手]

太宰治の最初の作品集の題は「晩年」。
渡辺謙は大河ドラマ「独眼流正宗」でその名を馳せた。
しかし、あまりにも強烈なその役のイメージが付いてまわり、
「ラストサムライ」に出演するまで、完全にそのイメージを拭い去る事は
出来なかったように思う。



「missing」というアルバムがある。

ジャケットには青年が写っているが、すばやい動きに追いつけなかったのか、狙ったものなのか、
画像は克明ではない。

青年は、当時大学4年生、23歳の池田聡。
写真に収めたのは、人気絶頂期の小林麻美。


1. デクレッシェンド
2. 倉庫BARにて
3. 色あせたBlue
4. なにも云わないで ~NO APOLOGY~
5. 哀愛君
6. My Jenny
7. DIANA(ディアーナ)
8. モノクローム・ヴィーナス
9. Moon Shadow
10. tears

散々言い尽くされたことだが、この池田聡氏のデビューアルバムは実に完成度が高い。
ほぼ100%と言っていいんじゃないかと思う。
一つの世界が見事に構築されている。

池田氏の声の質、年齢、容姿、一曲一曲の素晴らしさ。

そういう全ての要素が、ある時期の最高値のときに出会う「奇跡のシーズン」。
そのシーズンでなければ作られ得なかった作品たちがある。
例えば映画なら「ローマの休日」や「セーラー服と機関銃」など。


最初に最高のものを送り出してしまった人は、その後がしんどいだろうな・・と
勝手に想像する。

今、youtubeに彼の歌がたくさんupされている。
多くは25年から20年も前のものだが、実に良い。

彼の声はシャネルの5番みたいなところがある。
ほどよく甘い。
ほどよく暖かい。
品が良く、ほどよいやわらかさで、
周りによく通る。
そして。
香りの最後の最後、ほんの少しの「哀しみ」がある。

23歳の朴訥な青年の恋が、様々な形で入っているアルバムである。
このアルバムの中の「モノクロームビーナス」は爆発的にヒットし、
彼は当時の歌番組の常連になった。
毎週毎週出続けて、この人の持ち味である声の伸びが悪くなったのを聴いたときもある。
きっとすごく疲れているんだろうな・・と、ほぼ同い年の私は思った。

あれから時は流れて、私は、今の五十代間近の彼の歌う
「なにも云わないで ~NO APOLOGY~ 」や「倉庫バーにて」などを聴きたいと思った。
昨年デビュー25周年ということで記念のツアーを行われたそうなので、
きっとそこで聴くことが出来たんだろう。

今年になってから池田聡熱が再燃した私は、なんだかタイミングが悪い。
聞き逃してしまった。


「月の舟」も名曲である。
槇原敬之氏はじめ、何人かにカバーされている。
でも、私は池田氏の歌う「月の舟」が好きだ。
それは先に書いた哀しみが、彼の声にあるからだと思う。

この方は、伊勢正三氏、沢田知可子氏、中西圭三氏など様々な方たちと
コラボレーションされている。
それはそれでよいのだけれど、
でも本当のことを言うと、私はやはり池田聡一人がホール中央に立って
その良く伸びる声で歌を歌ってほしい。



「僕はある時点から、上手く歌おうとは思わなくなりました」
記憶違いでなければ、そう語っておられた。

多くの人の期待、希望、好意、夢、憧れ。
そういったものを自分の意思とは関係なく与えられる事は、
つらくは無いんだろうか。

ここ数日、ずっとこの人の「なにも云わないで ~NO APOLOGY~ 」を聴いていた。
25歳のときに繰り返し聴いた曲だ。
もうじき50歳になる今、私はまた聴いている。
おそらく、私にはもう二度と訪れない恋愛の情景が歌われている。

「今の私は誰かの胸で泣きたいだけ」

そう言った女の人の気持ちが、25歳のときよりはわかる。

池田聡はあまりにも素晴らしい作品集でデビューし、そしてそれからずっと
今日も、歌い続けている。

同じ時代に生まれてよかったと思える、数少ない歌手の一人。






      追記 文章中、沢田 知可子さんのお名前と「月の舟」の表記が誤っておりました。
          大変失礼いたしました。謹んでお詫び申し上げます。




      
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「ブラックスワン」と浅田真央 [雑感]


体がきつく、心もきつく、ここ数日涙を流しながら会社に行っていた。
こんなに体に鞭打って、這い蹲るようにして出社するのも馬鹿らしくなり、
今日は久しぶりに丸々一日休んだ。

亀太郎と一緒の時間がたくさんあったのがうれしかった。

youtubeで、自分が今の半分くらいの年齢のときに聴いていた曲を繰り返し聴いた。

それはほとんどが恋愛を歌った曲なのだが、果たして自分はこと「恋愛」に関しては、
何も成長していないんじゃないか・・と思った。
結婚していた人の事は、もちろん好きだった。
今でも大事な人であることに変わりは無い。
いつも、幸せでいてほしいと偽り無く思っている。


そういえば某氏がフィギュアスケートの浅田真央選手について、
「男と寝なければ駄目だ(色気ある演技が出来ない)」というようなことを書いて、
ちょっとした騒動になったとか聞いた。

違うんだなあ・・・

女は実際に抱かれなくても、十分に官能を表現できるのだ。
浅田真央選手だけの感受性と力があれば、見事に演じてくれるはずだ。

「ブラックスワン」という映画があった。

ここにも官能を表現できないプリマが出てくる。
清純で繊細な表現をさせたら右に出るものはいない。
しかし、蠱惑的な踊りが踊れない。

彼女が処女であるからだ― と、コーチは思う。

違う。

どんな女も異性にときめく心があり、好きな男に抱きしめられることを想像し
力強くキスされることを求め、全てをゆだねる瞬間を思い描くことがあるはずだ。

多くの女たちはそれを実行する。

けれど「できない」女たちもいる。


私には、性は禁忌だった。

母がいけないと言ったわけではない。
むしろ、「ボーイフレンドが出来たらうちに連れておいで」と言っていた。
けれど、私は母が、私が少女のままでいることを望んでいると感じ取っていた。
私は男の人に愛されたかった。
ずっと歳の離れた大人の男の人に、すっぽりと包まれて、
何もしらぬ赤子にするように一つ一つ性愛を教えていって欲しかった。

けれど私は自分にそれを禁じた。
それを破ったら、大切な母に悪いことが起こる様な気がした。
なので私はたまらなく怖かった。


「開放」してやればいい。

彼女たちの成熟した心身からこみ上げる性愛の欲求を、
思い切り自由に羽ばたかせてやればいいのだ。
想像の世界はすべてが自由だ。
どんな隠微な行いも、羞恥と歓喜の極みも、逃げることも挑むことも自由だ。

「ブラックスワン」の主人公が、最後に見事な黒鳥に成りきれたのは、奔放に男と寝たからではない。
自分の中の性欲も憎しみも、母親に対する愛情と同じだけの恨みも、全てを解き放ったからだ。

性体験を重ねなければ色気が出ないなど、思い違いをしないで欲しい。
抑圧すればするほど、あらゆるものはその力を増す。
性欲も然り、である。



私は自分がだんだんこども時代に戻っていくような気がする。
キスも、抱擁も、体の部分的な触れ合いも何も無い日々が長く続く。
こどもの頃は、そういう事はしないで生きていた。
男の子も女の子も、おんなじような体型をしていた。

男の人の体の硬さも、自分と重なったときの肩幅の広さも、だんだん忘れてきている。

全部忘れられたら楽になれるな、と思う。




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「未来ちゃん」写真集 : 川島小鳥 [本]



最初はよく出来た「絵」かと思った。
三つくらいの女の子が、親の敵に対すような形相で目玉焼きを口に運んでいる。

ああ・・そうそう、こどもってこんな顔して物を食べるな・・

書店で見かけたその写真集は、強く心惹かれるものがあったが
敢えて手に取らなかった。

それからしばらくして、別の本屋でまたこの子と遭遇した。

ぱらぱらとページを捲り― 私はもう本を置くことが出来なかった。


そこに居たのは私だ。

眉毛の見えるおかっぱ頭。
毛玉だらけのアクリルのセーター。

ああ・・そうだ、そうだよ。
私、いつもこういう恰好していた。

未来ちゃんはお澄まし顔で歌を歌っている。
物であふれた部屋の真ん中で、おじいちゃんの両肩に小さな足をのせて
立っている。

押入れを開けると、昔どこのうちでも使っていたような生地の
おそらくは重い綿の入った布団が積み上げられていて
その上に未来ちゃんが寝転がっている。

これは小さい頃よくした遊びだ。
布団ではなくベッドに憧れて、まるでふかふかベッドの上にいるようにうれしかった。

お風呂には兄弟たちと一緒にぎゅうぎゅう詰めで入る。
湯船ではなく、パステルカラーの大きなバケツに
未来ちゃんはすっぽり入っている。

お風呂場の小さな窓から、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちに負けじと
皆といっしょに首を出して何かを必死で見ようとしている。



昭和のこどもがここにいる。

私はそう思った。

懐かしく、限りなく愛おしく、そして切なさが湧いた。

ちょうど未来ちゃんと同じくらいの年のころ、
私はいつも母方の祖母といた。
母も仕事に出ており、私は祖母に育てられた。

祖母はいつも着物を着ていた。
私が三つの頃に着ていた着物を、たぶん私が中学生になっても着ていた。
祖母は片方は完全に、もう片方はほぼ失明していた。
完全に失明しているほうの黒目は大部分が白くなっていた。
私はその目を、怖いとか、嫌だとか、思ったことは一度もなかった。


未来ちゃんは、よく鼻を垂らしている。

そうそう、昔のこどもはよく鼻を垂らしていた・・
私もそう。
垂れている鼻水は、舐めるとしょっぱかった。




未来ちゃんは、佐渡に住む当時三歳の女の子だそうだ。
「未来」というのは彼女の本名ではない。

未来ちゃんの一年を、写真家川島小鳥が写した一冊だ。


何十年も前からそこに置いてあるものに囲まれて、
こども用の椅子の上に立ち上がりテレビを見る未来ちゃん。
テレビの上にはここだけ近代的なうさ子ちゃんがおいてある。

未来ちゃんは、いつもの少し眉間を寄せた表情で
考え事をしたり、何かに対峙したり、お台所で何かしたりしている。
笑っている。
おおっぴらに泣いている。
何かを見ている。
雪の中に立っている。


未来ちゃんを見ていると、この子が家族に愛されていることがわかる。

夏祭りには、鮮やかな色をちりばめた浴衣を着せられている。
それがちょっと着崩れているのが可愛い。

未来ちゃんの鼻水は、まるで練乳みたいだ。
濃いミルク色でなんだか美味しそうだ。



女は、自分を綺麗に見せようとしたときから、ある種の魅力が消えていく。

未来ちゃんは、不自然なアヒル口など作らない。
上目遣いにレンズを見詰め、首を傾げたりしない。

そのまんま其処に居る。

それがいい。
それが一番いい。


未来ちゃんほど可愛くはないが、この年頃の私の写真がたくさん残っているはずだ。
それは皆、私を愛おしく思い、私の幸せを祈り、「もう二度と訪れない今の私」の姿を残したいと思った人が撮った写真だ。

私を愛してくれた人はたくさんいた。

祖母は不自由な目に加え、重い心臓病も患っていた。
私は確実に、祖母の寿命を縮めた。
祖母は私が恩を忘れてひどい態度をとっても、
ただの一度も恩着せがましい事は言わなかった。
そして私が中学二年になった春に亡くなった。


未来ちゃん。
いいお写真をたくさん残してもらえてよかったね。
あなたはこんなに愛されていたんだよ。
あなたはこんなに、こんなに、可愛らしいこどもだったんだよ。




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ボスの回答 [雑感]



「朝、みんなが出社してくる前なら少しだけ時間がとれる」と返事が来たので
私は大慌てでオフィスに行った。

私を椅子にかけるよう促しながら、「結論から言うとね」とボスは切り出した。

「駄目だね」

私は二つの要望を出していたので、どちらが駄目なのかを一瞬考えた。

「あなた先ず会社が要求していることをちゃんとしてから、会社に要求しなさいよ」
どちらのことか未だ私にはわからない。
「みーんなそれぞれ事情を抱えて、それでもなんとか働いてやってるんだから」

ああ・・お金を借りられないということか・・と、思った。

「言語道断だよ」
「常識じゃ考えられないよ」

私は少しの恥ずかしさに耐えながら、「はい」と神妙に返事をした。
そうすることが、一番ボスを刺激しないからだ。

「お金はいいですよ。はい」と、封筒を渡されて、私は混乱したが
「ありがとうございます」と受け取った。

ということは、正社員に戻してほしいという要望が退けられたのか、とわかった。

「言語道断」
「常識じゃ考えられないよ」

そういわれるほど、「正社員に戻してほしい。そしてボーナスを受け取れる立場にしてほしい」と望む事は、
おかしなことなのだろうか。


去年の夏。
去年の冬。
いずれも賞与は出なかった。

いや、前者は出たが2万5千円だった。
そして後者は商品券で、確か2万円だった。

みんなが出社してきて、私は席に戻った。

私は今の会社に居る限り、もうボーナスを受け取ることはないんだなと悟った。



その日外出したボスから電話がかかって来た。
理由は忘れた。
又私が何かをうっかり失念していたか、ボスが質問したことに
すぐに答えられなかったかしたのだったと思う。

「あんなこと言ってくるなんて信じられないよ!」
「あなた先ず言われたことをちゃんとしてから物言いなさいよ!」
「あなただけだよ、あんな自分勝手なこと言ってくるの!」
「他のみんなは時間に追い立てられて必死でやってるのに、営業は時間が余って暇だから駄目なんだ!」
「あなたもっとちゃんとした仕事しなさいよ!
あなたのしてる事は"仕事"じゃないんだよ!!」

最後のボスの言葉で私は頭も心も体も固まってしまった。

あなたのしてる事は"仕事"じゃないんだよ!!
あなたのしてる事は"仕事"じゃないんだよ!!

その言葉がぐるぐると耳元で、頭の中で回り続けて、消えていかなかった。


一緒に仕事をしている人にその話をしたら、彼女の方が泣き出した。

「どうして? だってShoさん、こんなに結果出してるのに!
みんなお弁当食べてるのにさあ、Shoさんだけ食パン食べてて、
ボスにあんな事言われて、私だったら耐えられない!」


私の何が、ボスをそこまで怒らせているのか、いろいろ考えてみた。
たぶん直截のきっかけは、一年前の私の爆発だろう。

でもそれは、確かに私はいけなかったけれど、ボスにはボスで上長としての
不手際はなかったのか?
「本来ならば懲戒解雇に値する」ようなことだったのか?
そもそもボスはその場面を見ていない。
そういう場合は、双方からじっくりと話を聞くのが筋ではないのか?
私をそこまで追い詰めたのは、ボスのやり方ではなかったのか?

ボスは他のスタッフには優しい。
笑い声を交えて話をしている。
お気に入りにはもっと優しい。
先日の暴風の翌日、「あなた昨日帰れたの?」
「何回か電話して、近くのホテルを数日とるように言おうと思ってたんだよ」
と気遣っている。
確かに彼女はオフィスから遠い。
けれど幼稚園児ではない。
会社が彼女に頼んで、今の住所に住んでもらっているわけではない。
別に北海道や九州から通ってきているわけではない。

私は自分の欲求がわからないから、立ち止まって
「Sho、あなたはどうしたいの?」と聞かなければならない。

今の仕事は大好きなはずだった。
でもわからない。
本当に好きなんだろうか。

ボスはもう、私を辞めさせたいんだろう。
ボスにとって私は、使いづらい人間になったんだろう。

少し訓練すれば、誰かが私に取って代われると思っているんだろう。


昔は職場でよく泣いていた・・
私の先輩たちもそうだった。

今、私は泣かなくなった。
そこを通り越して、ひんやりした悲しみの中に居る。
けれどたまに、マグマのように熱くなるときがある。
その時はぐっと抑える。

「此処にしか居られない」と思えば狂いそうになる。
なので道を作る。
今はテキスト探しをしている。
少しずつでいい。
道を作って歩いていくのだ。



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ボスへの手紙 [雑感]


ボス

いつも御指導、御配慮をいただき、ありがとうございます。
下記の件につき一度お時間を頂戴できましたら幸いでございます。

①先日インセンティブを頂戴し、滞納していた携帯電話代が支払えましたが
今週末の心療内科受診薬代、そしてオフィスに行く交通費が無い状況です。

交通費はいつも3ヶ月分を頂戴しておりますが、
生活費が足りず、1ヶ月分をまず購入して残りを生活費に充てているため
上記のような半端な日数となっております。


上記の金額を会社から拝借出来ましたとしても、
現時点で既に何万円も会社からお借りしております。
 私には、ボーナスをいただいた際にお返しすることしかできません。


②私の処遇に関しまして、どうか以前のように「正社員」として
「賞与」も頂戴できますようにお戻しいただけませんでしょうか。
この件に関しましては、ボスにお考えがお有りと承っておりますが
経済状況が逼迫しており、ぎりぎりの状態です。


この一年、週末は夕食を雑穀枚とインスタントのみそ汁だけにしたり
平日の夕食は100円スーパーで買った食パンにジャムをつけたものだけにしたり
 自分なりにいろいろと切り詰めて参りましたが、
どうしてもお給料とインセンティブだけで生活していくことができませんでした。
 私の場合、定期的に検査、受診を受けなければならず、薬科も高く
お金がかかってしまいます。

スタッフそれぞれに事情を抱え努力していることは十分承知いたしております。
誠に心苦しいお願いでございますが、お時間をいただきたく
何卒よろしくお願い申し上げます。



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